仕組債(デリバティブ)被害
仕組債とは、株価や為替レート等と連動するデリバティブを組み入れた債券のことを言います。
具体的には、日経平均株価リンク債、パワード・リバース・デュアル債、通貨オプションなどが挙げられます。また、デリバティブを組み込んだ仕組投資信託も多く見受けられます(いわゆるノックイン型投資信託など)。
近時、多様な仕組債や仕組投資信託が大手証券会社や大手銀行等によって一般顧客に対して販売されており、その結果多額の損失を被るケースが増えています。一般に仕組債は、取引単位が数千万円と高額であるため、個人でも富裕層が勧誘の対象となり、中小企業のオーナーなどが付き合いのある取引銀行から勧誘され、断り切れず購入してしまうケースが多いのも特徴です。
この仕組債については、平成22年3月26日、商品自体の賭博性を初めて認めた画期的な判決が大阪地裁で出されました。
事案は、野村証券が会社経営者の男性とその経営する会社に2種類の仕組債を販売したものです。発行単位は各1億円で3年間保有すれば年10%強の金利が付くものの、1億円分購入に対し10銘柄の株式に10億円投資したとみなされ、株価が1銘柄でも50%(2回目の債券は65%)を下回って償還日までに回復しないと元本を全額失うリスクがあるというもの(2回目の債券は、対象銘柄の平均株価が105%となることを条件とした早期償還条項付き)でした。
判決では、上記仕組債を「ハイリスクで賭博性の高い商品」と認定し、担当従業員には説明義務違反があるとして、野村証券の損害賠償責任(過失相殺2割)を認めました。
その理由として、3年先の10銘柄の株価を予測することはプロの投資家でも困難であること、早期償還条件を満たすかどうかも偶然性が強いこと、金利の資金源をどう確保するか明らかでなく正当性に疑問があること、商品自体に経済的な合理性があるとも言い難いこと、算定した時価が適正であるという保証もなく流通性に疑問があること、原告らは一般投資家としての域を出ず、積極的に投資をして収益を求める投資方針でもなく、本件各債券のような複雑な仕組みのハイリスクな商品を購入するだけの適合性があったかは疑問であること等を挙げています。
また、仕組投資信託に関しても、大阪地裁平成22年8月26日判決は、ノックイン条件付き日経平均連動債を運用対象とする仕組投資信託につき、適合性原則違反および説明義務違反による不法行為を認定し、これを販売した池田泉州銀行に損害の8割と弁護士費用の賠償責任を認めています。
このように、大手証券会社や銀行であっても、難解な仕組債や仕組投資信託を十分な説明なくして勧誘し、一般顧客に多額の被害を与えるケースが増えており、上記各大阪地裁判決をはじめとして金融機関の法的責任が認められています。
当職は、様々な仕組債被害事件の訴訟等の取扱い実績を多数有しております。
また、当職は、名古屋先物証券問題研究会事務局次長、先物取引被害全国研究会幹事、全国証券問題研究会幹事を務めており、この種の新たな金融商品被害の救済に日夜取り組んでいます。
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名城法律事務所 弁護士正木あて