12月 24 2021
名古屋高裁令和3年12月23日判決(KOYO証券・くりっく株365)
昨日、名古屋高等裁判所民事第1部において、KOYO証券のくりっく株365事件について、判決がありましたので、ご報告させていただきます。
結論としましては、双方控訴棄却、原審維持となりました。
【判決の概要】
・判決日:令和3年12月23日
・裁判所:名古屋高等裁判所民事第1部
・裁判官:松村徹裁判長、永山倫代裁判官、溝口理佳裁判官(主任)
・一審原告:愛知県在住の70代会社役員男性
・一審原告代理人:正木健司、髙見裕一
・一審被告:KOYO証券株式会社、担当従業員(名古屋支店長)
・一審被告ら代理人:湊信明、服部毅、石田嘉奈子
・結論:一審原告及び一審被告らの本件各控訴をいずれも棄却する。
・認められた違法性:新規委託者保護義務違反、過当取引(一審判決と同じ)
・過失相殺:4割(一審判決と同じ)
・一審判決:名古屋地裁令和3年5月20日判決(先物取引裁判例集83巻)
・一審判決の結論:一審原告が請求した損害賠償額941万7468円(本件取引の差引損失額795万4320円と弁護士費用146万3148円の合計)について、522万0029円及びこれに対する平成28年9月17日から支払済みまでの年5分の割合による金員を支払うよう求める限度で認容(過失相殺4割)。
【判決の内容】
・新規委託者保護義務違反について
「一審原告は、くりっく株365のような差金決済を前提とする証拠金取引の経験はなく、その知識も有していなかったことに加え、専任の担当者から相場情報の提供や運用アドバイスを受けられるという経験がない又は経験が浅い顧客向けのコンサルティングコースを選択していることからすれば、一審原告に株式の現物取引や投資信託の経験があることを考慮しても、一審原告は保護すべき新規委託者に当たるというべきである。」
「一審被告会社の従業員らは、無理のない金額の範囲内での取引を勧め、限度を超えた取引をすることのないよう助言すべきであったのに、本件取引開始から約3か月の間に、新規建玉26件、建玉決済44件、建玉枚数563枚の取引を勧誘し、その中には相当回数のいわゆる特定売買が含まれ、短期的な取引が繰り返され、複雑な注文が行われていたこと、本件取引はコンサルティングコースによる取引であり、委託手数料が建玉1枚当たり片道4320円(日計り決済時は2160円)と高額であり、一審原告の損害に対する手数料の割合(手数料化率)は約52.2%に上ること、一審原告が証拠金の追加入金に難色を示し、取引の拡大に懸念を示していたことなどからすると、一審原告に明らかに過大な取引をさせたというべきであり、新規委託者保護義務違反が認められることは明らかである。」
・過当取引について
「上記⑴に掲げた事実に加え、一審被告会社の従業員らが本件取引開始の翌日に証拠金の追加入金を勧誘し、その後も証拠金の追加入金を勧誘したこと、ほとんどの本件取引が一審被告会社の従業員らの提案を一審原告が受け入れる形で決められていることからすれば、一審被告会社の従業員らにより過当取引に当たる取引の勧誘が行われたというべきことは前記1(略)のとおりであり、一審被告らの前記第3(略)の主張は採用できない。」