相続・遺言Q&A


(1).相続の対象となる遺産には何が含まれますか。
 不動産、預貯金、有価証券等のプラスの財産だけでなく、借金等の債務すなわちマイナスの財産も含まれます。

(2)遺産については、どのように調べたらよいのでしょうか。
 預貯金は金融機関に照会することができます。これは弁護士が、弁護士会照会により行うことも出来ます。不動産は名寄帳等から、株式は配当通知等の通知書等から判明することがあります。現金等の動産については、銀行の貸金庫を借りていなかったかチェックすべきです。

(3)遺産の不動産や株式の価額はどうしたらわかりますか。
 不動産については、固定資産税の課税標準価額、路線価、地価公示による公示価額、近隣の取引事例等が参考になります。正確には、不動産鑑定士に鑑定してもらうことが考えられます。株式については、上場株式は証券取引所で公表されている取引価格により、非上場株式は同業種の会社の上場株式取引価格を基準にして、資産内容、収益配当の状況を考慮して決める方法等があります。

(4)相続税はどのような場合に支払わなければなりませんか。
 相続税は、相続によって取得した財産のうち経済的価値のある全てのものにかかってきます。課税対象となる相続財産の合計額を課税価格といい、課税価格が基礎控除額(5000万円+1000万円×法定相続人数)を超える場合に、相続税を支払わなくてはなりません。その場合、被相続人の死亡時の住所地を管轄する税務署に申告します。そして、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に申告の手続きを行い、その期限内に相続税を納付しなければなりません。なお、相続税を延滞すると、別に延滞税がかかります。

(5)預金は、自分の法定相続分についてすぐに払い戻しが出来ますか。  
 他の遺産と同じく遺産分割協議等において分割割合が決定されるまでは、預金の払戻しは出来ません。銀行実務では、相続人間でのトラブルを防ぐために慎重な対応がされており、被相続人死亡後は預金口座が一旦凍結されてしまうのです。よって、相続人の一人が自分の持分相当額だけを勝手に引き出すことは出来ないのです。

(6)被相続人の貸金は、どのように相続されるのでしょうか。
 貸金など金銭その他の可分債権は、相続開始とともに法律上当然に分割され、各相続人はその相続分に応じて権利を承継することになります。よって、各相続人が相続分に応じて債権を取得し、単独で請求できることになります。しかし、実際には、遺産分割により債権の帰属者が決まるまでは支払請求しないのが実務といえます。

(7)生命保険金は相続財産となるのですか。
 受取人が被相続人以外の法定相続人に指定されているときは、生命保険金は受取人固有の権利として取得するので相続財産には含まれません。受取人が単に相続人と指定されている場合も、相続ではなく保険契約によって生命保険金を受け取るのですから、やはり相続財産には含まれません。これに対し、受取人が被相続人となっている場合には生命保険金は相続財産となります。

(8)被相続人名義で借りていた借家契約はどうなるのでしょうか。
 借家契約については、相続により相続人に当然に承継されます。その際、家主の承諾は不要であり、何らの名義換え費用も支払う義務はありません。借地の場合についても同様です。

(9)葬儀費用を遺産から出すことはできますか。
 香典でまかなっても不足する費用分については、相続財産に関する費用として相続財産の中から支払うことができます。

(10)被相続人の借金は相続人がどのように支払うのですか。
 借金など可分債務は、各相続人の相続分に応じて当然に分割承継されることになります。よって、各相続人は自己の相続分に応じて借金を支払う義務があるのみで、相続債権者は1人の相続人に対し全額請求することはできません。

(11)法定相続人について教えてください。
 法定相続人は、まず配偶者であり、次に血族のうち①子②直系尊属③兄弟姉妹の順序となります。このように配偶者は常に相続人となり、血族のうち法定相続人がいなければ単独で相続人になります。なお、上記①の子には養子も含まれます。

(12)法定相続人の相続割合はどうなりますか。
 相続割合については、相続人が①配偶者と子の場合は各2分の1、②配偶者と直系尊属の場合は配偶者が3分の2で直系尊属が3分の1、③配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合は配偶者が4分の3で兄弟姉妹が4分の1となります。なお、同じ立場の相続人が数人存在する場合には、その中で頭割りとなります。ただし、子のうち、婚姻外で生まれた子は他の子の2分の1となります。

(13)認知されていない子に相続権はありますか。   
 認知されていなければ、相続権はありません。この場合、その未認知の子は実父に対し、認知するよう家庭裁判所に請求することが可能です。この認知請求は実父が死亡している場合でも出来ますが、その実父が死亡してから3年以内に申し立てなければなりません。

(14)被相続人に多額の借金があり、支払うことができません。
 多額の借金を免れるため、相続放棄をすることが考えられます。被相続人の借金等の債務は、相続開始と同時に当然に分割承継されますが、相続放棄をすれば、初めから相続人にならなかったとみなされるのです。この相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述して行わなければなりません。また、遺産の範囲内において借金を返済するための限定承認という方法もあります。なお、共同相続において、相続放棄は各相続人単独で出来ますが、限定承認については相続人全員が共同して手続をする必要があります。

(15)法定相続人に遺産を渡したくないのですが、どうしたらよいですか。
 家庭裁判所に推定相続人の「廃除」を請求することが考えられます。この場合、廃除原因(被相続人に対する虐待もしくは重大な侮辱、又はその他著しい非行)の存在が家庭裁判所において認められると、当該相続人の相続人資格が失われます。この廃除請求は被相続人にしかできません。なお、遺言によって廃除することもできます。

(16)被相続人から生前特別な援助を受けた事情は相続で考慮されますか。
 被相続人から遺贈や生前贈与を受けた相続人(特別受益者)に対しては、その受けた利益の限度で相続分から控除するよう求めることができます。特別受益となるのは、共同相続人の一部の者が受けた遺贈と、婚姻・養子縁組のため若しくは生計の資本として受けた生前贈与です。

(17)被相続人のために無償で尽力した事情は相続で考慮されますか。
 被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした共同相続人は、その法定相続分に寄与分に相当する額を加えた財産を相続できます。寄与分となるのは、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護等です。

(18)遺産の分割はどのような手順で行なえばよいのでしょうか。
 一般的に、共同相続人全員が揃って協議をし、合意の上で遺産分割協議書を作成することになります。遺産分割協議書は、持ち回りにより作成することも出来ます。また、共同相続人間の合意により、法定相続分と異なる分割をすることも当然可能です。このように、遺産分割協議は話し合いである以上、ある程度柔軟な解決をすることが出来ます。

(19)分割協議がまとまらない場合、どうしたらよいでしょうか。
 家庭裁判所に遺産分割調停の申立てをすることになります。申立人は共同相続人のうち誰でも構いませんが、共同相続人全員が当事者とされる必要があります。この遺産分割調停でも、やはり合意に至らない場合には、遺産分割の審判手続に移行することになります。この遺産分割審判では、家事審判官が、当事者の主張や客観的な証拠等をもとにして分割割合に関する結論を出し、強制的に分割するということになります。

(20)共同相続人の一人が遺産を使ってしまわないか心配ですが、どうしたらよいですか。
 預貯金は共同相続人全員の同意がないと引き出せないのが銀行の実務ですので、これが費消される危険性は低いといえます。現金の費消を防ぐための手段としては、遺産分割の審判を申し立て、同時に審判前の保全処分の申立てをする方法があります。この保全処分には、財産管理者の選任、仮差押、仮処分等があります。

(21)遺留分について教えてください。
 配偶者、子、直系尊属には遺留分(法律上保証ないし留保された相続財産)があります。この遺留分の割合については、直系尊属のみが相続人であるときは遺産の3分の1、その他の場合には遺産の2分の1であり、相続人が数人いる場合には、各自の法定相続分に従って遺留分も計算されます。そして、遺留分を侵害する贈与や遺贈がされた場合には、それによって利益を得た者に対し、遺留分を保全するのに必要な範囲で遺留分減殺請求権を行使し、給付済みの財産の返還を請求し、未給付の財産に対する支払請求を拒否することが出来ます。この遺留分減殺請求権は裁判を利用しなくても行使することが可能ですが、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与または遺贈があったことを知ったときから1年間、相続開始から10年間が経過すると時効消滅してしまうので注意すべきです。

(22)遺言書は、どのように作成したらよいのでしょうか。
 遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言、特別方式の遺言があります。このうち、自筆証書遺言は遺言者が自書・捺印するだけで足り、最も簡易に作成することが出来ます。しかし、被相続人が死亡後に家庭裁判所で検認手続を行う必要があり、また相続人間で自筆証書遺言の有効性を巡って争いが生じる恐れも否定できません。そこで、このような争いを未然に防ぐためには、公正証書遺言がより確実といえるでしょう。これは、公証役場に行って、遺言内容を公証人に申述し、2人以上の証人の立ち会いのもとで、公証人に遺言書を作成、保管してもらうものです。その際、遺言書の内容としては、各相続人の法定相続分ないし遺留分に配慮したものにしておけば、後の紛争を予防することに資するといえます。

(23)遺言書を訂正することは出来ますか。
 遺言は、遺言者本人が生前有していた最終的な意思というべきものであり、いつでも何度でも訂正することが可能です。本人が自ら遺言書を破棄すれば当該遺言を取り消したことになりますし、遺言書が複数存在する場合は、後で書いた遺言書の内容が優先されることになります。

(24)封をされた遺言書を発見した場合、自分で開けてもよいのでしょうか。
 遺言書がある場合、被相続人の住所地の家庭裁判所に対し、遺言書検認の申立てを行います。これは、遺言書の存在を明確にし、偽造や変造を防ぐための手続です。この場合、封緘された遺言書は、家庭裁判所において、裁判官及び相続人等の立会いのもとでなければ開封することができません。なお、検認を怠っても遺言の効力自体に影響はありませんが、法律上過料に処せられます。